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お通夜とは?お通夜を行う意味や流れは?髪型や服装などの作法も解説
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お通夜とは?
お通夜とは遺族や親しい人が集まり故人とともに最後の夜を過ごす、葬儀前に行われる儀式のことです。
もともとは夜通しで故人に寄り添い、灯明と線香の火を絶やさないように寝ずの番を行ったことから通夜と呼ばれています。
通夜には、死亡日の夜に家族・親族のみで行う「仮通夜」と、故人が生前交流のあった人々を招き僧侶による読経が行われる「本通夜」があります。
時代の変化とともに通夜の儀式は省略される傾向にあり、現代では夕方18時頃から始まり約2~3時間程度の儀式で終わるのが主流で「半通夜」とも呼ばれます。
お通夜を行う意味
お通夜は、故人と過ごす最後の夜に執り行う儀式です。夜通し線香や灯明を絶やさず供えることで、故人を悪霊から守り、あの世への道標を作るとされています。
お通夜の由来は諸説ありますが、主なものは以下の3つです。
【日本古来の「殯(もがり)」の儀式が変化したもの】
「殯(もがり)」は死後もすぐには埋葬せず、遺体を棺に納めて長期間仮安置する慣わしです。
故人の復活を願いつつも、遺体の変化を見守ることで緩やかに死を受け入れていくことや、死者の祟りを畏れ霊魂を慰めることが目的でした。
この殯の儀式が短縮・形式化したものであるという説です。
【仏教の通夜の起源は釈迦にまつわる故事から】
仏教では、釈迦が入滅した際、弟子たちがその死を偲び釈迦の教えを夜通し語りあったという故事から始まったとされています。
【死亡確認のため】
医療が未発達だった時代、まれに葬儀中に故人が蘇生することがあり、本当に亡くなっているかどうかを確認するため一晩見守ったことが通夜の由来という説もあります。
お通夜の日程
一般的に全ての予定が滞りなく組まれた場合、亡くなった翌日に弔問客を迎えてのお通夜(本通夜・半通夜)を行い、翌々日に葬儀・告別式を行います。
しかし、さまざまな事情から故人の逝去から通夜までの日にちが数日以上ずれ込むことも多々あります。
通夜を行う日程に明確な決まりはないため、以下のことを考慮し遺族、親族および葬儀社と相談し決めましょう。
・火葬・埋葬までの時間
日本では法律により、死後24時間経過した後でなければ火葬・埋葬を行ってはならないと定められていますので、ご遺体を安置する必要があります。
したがって、亡くなった翌日以降でなければお葬式を行うことはできません。
・火葬場・斎場の予約
通常、葬儀・告別式の日に火葬する流れとなります。つまり、「葬儀・告別式」は火葬場の予約が取れた日、「お通夜」は火葬場の予約が取れた前日にということになります。
近年は火葬場の確保が難しいことも多く、予約が取れないと日程決めが進まないため、まず確認が必要です。
・友引の日は注意が必要
一般的に六曜の「友引」の日はお通夜や葬儀の日取りで避けられます。字面から「凶事に友を引く」ことが連想されるためです。
実際、六曜は中国の占いが元で仏事と関係なく、友引にお通夜を行うことには問題はありません。
しかし、参列者全員が気にしないとも限らないので喪家は配慮が必要です。また友引の日は休業している火葬場も多いので注意しましょう。
仮通夜と本通夜の違い
お通夜には、「仮通夜」と「本通夜」があります。
「仮通夜」とは、故人が亡くなった当日に親族間のみで執り行われる通夜のことをいいます。
親しい人たちで故人を見守り、最後の時間を一緒にゆっくり過ごすことに重点を置くため基本的には特別何かを行うということはありません。しきたりやマナーについても細かい決まり事はなく、服装についても派手なものを避けて落ち着いた服装で参列すれば問題ありません。
「本通夜」とは、その翌日(故人が亡くなってから2日目の夜)、または葬儀・告別式の前日に行われる通夜のことです。
宗教儀式や一般の会葬者の参列を伴う通夜式と通夜ぶるまいが行われます。一般的にお通夜というとこの「本通夜」のことを指します。
近年では故人を病院から直接、葬儀社の安置所などに預けることも多く、「仮通夜」を行わずに「本通夜」のみを行うケースも少なくありません。
また、葬儀そのものが縮小・簡略化され、防火上の理由や遺族の負担を考慮して、数時間程度で終了する「半通夜」が主流となっています。
お通夜の流れ
現代主流となっている「半通夜」においてもさまざまな儀式が行われます。
こちらでは、仏式における一般的なお通夜の流れをご紹介します。
1.お通夜の準備
喪主・親族は、葬儀社との打ち合わせ・受付準備のために、早めに集合します。
目安として開式時刻の2時間ほど前には会場に到着するとよいでしょう。控室が用意されるので、着替えを済ませます。
供花・芳名板、焼香の順番や礼状や返礼品の内容、数などの確認を行います。
また、お通夜を手伝ってくれる方への挨拶と受付係、会計係など役割決めを行います。
2.参列者の受付
参列者の受付は、開式の約30分~1時間程前から行うのが一般的です。
受付係や会計係の世話役は事前に準備し待機します。参列者は会場に到着した後、芳名帳に記帳して香典を渡します。
3. 会場に着席
開式の10分ほど前になると案内がありますので、親族・参列者は会場に入り席次に沿って着席します。
一般的に席次は祭壇に向かって右側が喪主とその家族、親族席。左側が、友人、知人、会社関係者席となっており、故人と血縁の深い方から順番に前列から着席します。
4. 開式・僧侶入場
僧侶が入場し、お通夜が開始されます。
5. 読経・焼香
僧侶による読経が行われ、その間に焼香を行います。宗派の流儀に沿って喪主、遺族、一般参列者の順に焼香します。
読経の時間は30分から40分程度が多いようです。
6. 僧侶退場・閉式
読経や焼香などの儀式が終了し、僧侶が退場。最後に親族を代表して喪主から参列者にあいさつをします。
喪主のあいさつが終わると、お通夜は終了です。
7. 通夜振る舞い
お通夜の後は飲み物や食事で参列者をもてなす「通夜振る舞い」が行われます。
故人への供養とともに、忙しい中参列いただいた弔問客への感謝の気持ちを表す席です。僧侶にも同席をお願いし、遺族・親族が接待します。
僧侶が辞退された場合は、御膳料を包むのが一般的です。
通夜振る舞いは長々と開くものではなく、1〜2時間程度で終了します。
お通夜の内容や作法は宗教・宗派や地域によって異なる場合があります。事前に菩提寺や年配者の親族、葬儀社の担当者などに確認しておくと安心です。
お通夜の所要時間について
一般的な開始時間
お通夜は、18時または19時の開始が一般的です。
ただし、場合により早くは17時、遅くは20時に開始になる事もあります。事前に確認をしておきましょう。
参列者の受付は、お通夜の開始時間の30分~1時間程前に始まります。
【会場への到着時間】
・遺族・親族の場合
遺族・親族は葬儀社との打ち合わせや準備があるため1~2時間前には会場に到着し、控室で待機します。
・一般参列者の場合
一般参列者は、受付開始時間を目安にするとよいでしょう。あまり早く到着しすぎると準備が整っていない場合がありますので気を付けましょう。
お通夜の所要時間
葬儀・告別式の前夜に営まれるお通夜では遺族・親族以外の一般の弔問客も参列し、宗教儀式後、通夜振る舞いが行われます。
本来のお通夜は、通夜振る舞い後に夜通し故人を見守る夜伽(よとぎ)を行いました。これを「本通夜」と呼びます。
しかし現在では、都市部などに遺族の宿泊できる設備がある葬儀場や斎場が少ない、防火上の問題で夜通し火を灯すことが難しいといった理由から通夜が短時間で終わることが多くなっています。これを「半通夜」と呼びます。
お通夜の宗教儀式そのものの所要時間は、1時間~1時間半程度ですが、全体的な所要時間は、「半通夜」と「本通夜」で異なります。
・半通夜の場合
半通夜の場合は、宗教儀式の後に通夜振る舞いを行い散会となります。
通夜振る舞いは1~2時間ほど行われますが、一般参列者の場合は最後まで出席する必要はなく、30分~1時間程度を目安に退席します。
遺族・親族は、通夜振る舞いの最後まで出席します。
お通夜開始の1~2時間前に集合することを考えると、全体的では3~6時間程となります。
・本通夜の場合
本通夜も、宗教儀式自体の所要時間と通夜振る舞いの時間は変わりません。
しかし、本通夜の場合は、通夜振る舞いが終わった後、遺族・親族は夜伽(よとぎ)を行うため、半日程度かかります。
一般参列者の場合は夜伽に参加する必要はありませんので、半通夜・本通夜に限らず、全体的なお通夜にかかる時間は1時間半~2時間程度となります。
知っておきたいお通夜のマナー
お通夜の参列基準
お通夜と葬儀・告別式は両方に参列したほうが良いのか、どちらか一方の場合はどちらに参列したら良いのか判断に困る方は多いでしょう。
お通夜は元々、遺族や近親者、親しい友人など、故人と関わりの深かった人たちが集まって最後の別れを惜しみ、故人の霊と遺族を慰めるためのものでした。
特に親しい関係でなければお通夜ではなく、翌日の葬儀・告別式に参列するのが本来です。
しかし、現代では故人との関係性に関わらず、昼間に行われる葬儀・告別式よりも、出席しやすい夕以降に行われるお通夜の方に参列する人も多くなっています。
また、通夜振る舞いについてご遺族から誘われたときは受けるのが礼儀です。
ただし、あまり長居するのは禁物です。故人やご遺族とあまり近しい関係でない方でしたら30分程で退席するのが一般的です。
途中で退席するときは、周囲の人に「お先に失礼します」と声をかけるようにします。
服装や髪型のマナー
・服装
お通夜には「準喪服」または「略喪服」で出席します。
かつて、お通夜は取り急ぎ駆け付けるものいう考え方から参列者は「略喪服」で弔問することとされていました。
しかし、現在は亡くなった日からお通夜の日までが延びたことや通信手段の発達などから、参列者も親族と同様に「準喪服」で参列することが増え一般的になっています。
「略喪服」は黒・紺・グレーなどの地味な色のスーツやワンピースをフォーマルに着る装いです。
合わせる小物について、男性は、シャツは白無地、ネクタイや靴下は黒無地の物を着用します。
靴も基本的には黒の革靴にします。女性の場合は、ブラウスやシャツ、その他小物類もすべて黒に統一しましょう。
「準喪服」は一般的な喪服(ブラックフォーマル)のことです。ブラックフォーマルは冠婚葬祭に適した黒の衣服です。一般的なブラックスーツよりも黒色が深いのが特徴です。
男性はブラックフォーマルに柄が入っていない白無地のシャツ、黒無地のネクタイ、靴下を着用します。靴は飾りや光沢のない黒のものを選びます。
女性のブラックフォーマルはワンピースやアンサンブルの他、パンツスタイルでも構いません。
露出は控えめに、衿元が開き過ぎずないデザインで、丈については、袖は肘が隠れる長さ、スカート丈は膝が隠れる長さを目安にしましょう。
また、華美にならない様、身体のラインが目立ちすぎるものは控えましょう。
小物類はすべて黒で統一するのがもっともふさわしい装いですので、ストッキングや靴もてシンプルな黒のものにします。
ワンポイントやラメが入ったストッキングやエナメルなど光沢のある素材の靴は華美になりますので避けましょう。ヒールの高さは5㎝~7㎝くらいが適当です。
夏場の出席には、暑さ対策のため一重仕様や通気性の良い素材で仕立てられた夏用のブラックフォーマルがおすすめです。
女性の場合、袖丈は半袖でも肘が隠れる長さを選びましょう。
冬場の出席には防寒着が必要となることも。一般参列であれば、地味な色合いのコートを着用して行き、入り口で預けることも可能です。
出棺のお見送りにはコートを脱いで礼服になるのがマナーですが、黒のコートの場合は着たままでも礼に反しません。冠婚葬祭用に黒のコートを一着持っておくと安心です。
また、室内での防寒のためジャケットの中にセーターを着ることは問題ないとされていますが、本来のマナーからは外れます。できればインナー等で調節した方が無難です。
ネックレス・イヤリング等のアクセサリーは涙を連想させることから白やグレーのパールが一般的です。
正式なモーニングジュエリーのひとつとされているジェットはもちろん、黒曜石や黒珊瑚、オニキス等でも構いません。
いずれも悲しみが重ならないように一連タイプのものを選びましょう。
・髪型・メイク
お通夜ではお辞儀をする場面が多くなりますので髪型はすっきりと。ロングヘアの場合は後ろでタイトにまとめましょう。
使用するヘアアクセサリーは黒いゴムなど黒一色で光らないシンプルなものを選びます。
メイクは色を抑えたナチュラルメイクを心がけます。しかし、ノーメイクでは逆に失礼にあたることも。
華やかなメイクは避け、清潔感のある落ち着いた印象に仕上げましょう。
香典のマナー
「香典」とは、故人の霊前に供えるお香をお求めくださいという意味が込められています。香典は香典袋(不祝儀袋)にいれてお渡しします。
香典についても、書き方、包み方、渡し方などのマナーがあります。また、包む額の目安なども把握しておくと安心です。
・香典袋の書き方
特に気を付けたいのが香典を贈る際の名目「表書き」です。
香典袋は、基本的にお金を入れる「中袋」とそれを包む「外袋」に分かれていますが「表書き」は外袋の表面の上段に書きます。
「表書き」は故人が信仰していた宗教によって書き方が変わってきます。
仏式の場合…「御霊前 (四十九日以降は「御仏前」)」
神式の場合…「御神前」「御玉串料」
キリスト教式の場合…「御花料」
宗教や宗派が不明な場合や故人が無宗教の場合は「御霊前」「御香典」などにします。
表面の下段には贈り主の名前をフルネームで書きます。
外袋の裏面は下、上の順に折ります。
・袱紗の包み方
香典は袱紗に包みます。弔事と慶事では包み方が異なりますので注意が必要です。
弔事の場合、まず袱紗の中央より少し右寄りに香典袋を置きます。つぎに右側を中に折ってから、下、上の順に折ります。最後に左側をかぶせるように折り込みます。
慶事の場合は、左右が逆になり、上下の折り順も逆になります。
また、金封袱紗は弔事の場合、まず開きが左側にくるようにします。
左開きに置いたあとは表書きが読めるように香典を入れ、口を閉じます。慶事の場合は逆にし、右開きで使用します。
・渡し方
香典は袱紗を右手に乗せて左手で開いて取り出し、手早く畳んだ袱紗の上に相手側から文字が読める向きで香典を乗せます。
「この度はご愁傷様でございます」とお悔やみの一言を添え、折り畳んだ袱紗を台代わりにして両手で差し出します。
・金額の目安
香典の金額は贈り主の年齢や故人との関係性、地域の慣例などによって異なります。
一般的に会社の同僚や友人・知人の場合は目安として20代は三千円〜五千円程度、30代以上は五千円〜一万円程度とされています。
親族(親戚)の場合の目安として20代は一万円程度、30代以上は三万円〜十万円程度が相場です。
一般的に四(死)、六(無・亡)、九(苦)の数字は避け金額に見合った格調の香典袋を選びましょう。
持ち物のマナー
お通夜に持っていくべきものにもマナーがあります。いざという時に慌てないために事前にチェックをしておきましょう。
揃えてバッグの中にまとめておくと安心です。
・香典と袱紗
まず忘れてはいけないのが香典です。前述の通り、香典は香典袋に入れ、袱紗に包んで持参します。
・数珠(じゅず)
数珠は念珠(ねんじゅ)とも呼ばれており、仏式のお通夜に参列する時には持参します。
本式数珠と略式数珠(片手念珠)の二種類があり、本式数珠は故人の宗派に合わせなければならないため、どの宗派でも使える一重の略式数珠を使うのが一般的です。
数珠は男性と女性では玉の大きさが異なります。略式念珠の場合、主玉の大きさは男性用で10~12㎜前後、女性用で6~8㎜前後が一般的です。
数珠は合掌・焼香以外の使用しない場面では房を下にし、左手に輪を通して持ちます。
霊前で手を合わせるときは、左手のみに数珠の輪を通して合掌する方法と、合掌した両手に数珠の輪をかける方法があります。
仏式以外のお通夜、もしくは自分が仏教徒でない場合は、持参する必要はありません。
また、数珠の貸し借りは厳禁です。手元に数珠がない場合は持参しなくても問題ありません。
・ハンカチ
黒か白の無地のハンカチが基本です。小さなものですが、意外と目立つものです。派手な色柄のものは避けましょう。
・バッグ
男性はバッグを持っていかない方が多いですが、持つ場合は黒色で光沢や柄のない手で持つタイプのバッグにしましょう。
女性用は黒一色で小さめの布製のバッグが基本です。
オートクチュールの世界では、ドレス・バッグ・靴をすべて同じ布地からお仕立てしていました。
そのことから「鞄や靴も布製が正式」と言われていますが、光沢のないカーフやスエードなどの革製でも構いません。
黒一色で、留め金などのあまり目立たないものを選びましょう。エナメルなどの光沢のある素材は華美に見えるため避けましょう。
お通夜の時間に間に合わない場合
訃報は突然の知らせとなるので、仕事の都合や遠方から場所等で、お通夜の開始時間に間に合わないこともあるかと思います。
お通夜に遅れてしまう際は、必ずお通夜が始まる前に連絡を入れましょう。
・1時間以内の遅刻の場合
お通夜の所要時間は1時間~1時間半程度です。1時間以内の遅刻であれば、お通夜がまだ進行されている場合が多く、焼香に間に合うようであれば駆け付けたほうが良いでしょう。
・2時間以上の遅刻の場合
2時間以上の遅刻の場合は、お通夜が終了している可能性あります。あらかじめ遺族の都合を確認しましょう。
ただし、大幅な遅刻は喪主や遺族に負担を与えてしまいますので、その日の参列は避けて、翌日の葬儀や告別式に参列するほうが望ましいです。
受付が終了している場合、香典は直接喪主に渡すようにしましょう。
葬儀場のスタッフなど喪主以外に渡すことはトラブルの元になりますので避けてください。
渡すタイミングを逃した場合、翌日以降に行われる葬儀・告別式または後日ご遺族のお宅に弔問した際に渡します。
まとめ
時代とともに「お通夜」の形式は変わりつつありますが、故人とゆかりの深い人々が集まって、冥福を祈り、別れを惜しむ大切な儀式であることは変わりません。
皆で故人を偲んで生前の思い出を語り合い、故人を送り出すための心の準備をしましょう。
TOKYO SOIR編集部
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